散る花に 胸が高鳴った
ほんのり優しいピンク色
ゴツゴツとした 雨に濡れて
まるで黒い岩のように光る幹や枝から
こんなにやわらかで可愛い色の
お花や葉が芽吹き
私達の中には こんな柔らかなものが
生きているんだよ、と諭されるよう
雨の日
風に散る花びらが足元の
小さな水たまりの中をくるくるとまわる
となりの小さな用水路には
散った花びらがたくさん流れていた
きっとあなたは桜の季節が来る度に
誰にも知られずに
あの11階からの景色を思うのだろう
もっともっと何倍もの川幅に
もっともっとたくさんの花びらが
ピンク色に川を覆い流れていくところを
わたしはとても
見に行くことができないから
この小さな用水路で
どこかの川へと目にもとまらない
早さで散り散りに流れていく花びらを
雨にうたれ 風に散る濡れた花びらを
花冷えの日に羽織った黒いコートに
たくさん貼り付けながら
眺めていた
寒い冷たい風の雨の日。一人しずかに
雨と風と流れる川の音 自分の吐く息までもが聞こえていた
きっとあなたの 想う川は あたたかく
キラキラと日に照らされていたのかも知れない
あたたかな部屋で誰かを抱きしめながら見ていたのかもしれない
私の好きな人は
お話しがとても上手
紡ぎ出す言葉が温度と色と物語をつれてくる
彼は 花びらは
ここから海へは届かないだろうな と言った
優しく吐息混じりに
その唇が せつなくて私はこんな うたを書いた
あなたとの春の想い出に✨