Iちゃん
私のいとこ
Iちゃんが…死んだ
彼女から来た最初で最後のメールは
結婚報告だった。
普段メールなんてしてこない子だった
知ってる?
わたしのことを
〇〇ねぇ(お姉ちゃん)と呼ぶ
女の子は、あなたがいなくなったら
もう、誰も居ないんだよ
Iちゃん
棺の中のIちゃんは
真珠のネックレスをして
ウエディングドレスを着ていた
ピンク色の祭壇
お経はなくて
軽やかな音楽が流れて
カサブランカの香りの中で
彼女を見送った
泣くことができなかった
すべてが遠く映画をみているようだった
肝硬変だった
血にあふれて死んだ
人はいつか死ぬ
何でいつどうではなく
生きていたから死んだという
事実がそこにはあるだけ
酒とタバコ
私はその苦しみを寂しさを
わかちあってあげられなかった
過呼吸をおこす彼女を
ただ、大丈夫 と 背中をさするだけ
話してくれるのを、ただ待っていては
いけなかったのかな、
彼女の心はもう きくことが出来ない
私もいたみとつらさに勝てなくて
幻覚がみえるまで
お酒を飲んでいたよ
薬を飲み出しても
コントロールできなければ
そうしていた
私はいつもそうして、お酒に逃げていた
あの時だって
失った時間は大きい
Iちゃん
でもあなたは、命をうしなってしまった
Iちゃんの心にもっと寄り添って
あげたかった
本音を吐くまで飲み明かし
抱きしめてあげればよかった
かないくん
わたしは
としをとった
大切な人を何人も
見送って
この本の意味が
今ならわかる
死んだら、はじまる。
あなたの命日には
毎年レモンサワーを飲もう
いつかは、本当に
グラスをぶつけて
乾杯しよう
必ずその日はくるから