ある春の晴れた日
腕を組み
宙を見上げる
今が生きている この部屋に
過去が生きている
今と過去が
想いと重いが
待ち合う部屋
よく磨かれた窓ガラスが
春の冷たい風を遮り
温かな日差しだけが
部屋をやわらかく満たしていた
……しずかだ
窓の外では
未だ冷たい風が
生まれたばかりの
花や草木たちを揺らしている
3月
ひとり 10年の時を思う…
ふと ふいに
ここで立ち止まった。
振り返ることのないままに
進んできた
早いのかどうかは 分からなかった
一日一日はとても
重く尊いものだった
変わらない香りだけが
とりのこされたように
今と過去とを繋いでいた
時は経験を作った 他の
誰にも奪うとこできないもの
時は想い出を作った 他の
誰にも盗むことのできないもの
時は残酷にも大切なものを奪い
また命よりも大切なものを与えてくれた
………
生きている
10年か……
わたしは10年後
またここに立ち
20年……
とつぶやくだろうか
生きているかぎり
わたしは私を作っていく
ある春の晴れた日
わたしは ふと ふいに ここで
立ち止まった。
木々が揺れている
花も揺れている
それなのに ここは 静かだ
時折いやましに風が吹く
その度に
花びらが 散り 舞い 踊る のを
部屋の中の私は
知る由もなかった…